すると彼は、穏やかな微笑みを浮かべて、私の頭をポンポンと撫でる。温かく、大きな手のひら。なんだか安心したような気分になった。


「諦めてはいけなかったな。この前の老人の件で、君が教えてくれたのだった。幼子が悪霊になるのは、確かに痛ましいことだ。一緒に手伝ってくれないか、陽葵」

「……うん!」


 胸が熱くなるほど嬉しかった。紫月が私の気持ちを汲んで、あの男の子の地獄行きを阻止しようと、思い立ってくれた。


「僕も何ができることがあればお手伝いしますニャ~」

「もちろん私もです!」


 千代丸くんと琥珀くんも、笑顔でそう言ってくれた。私は満面の笑みを浮かべて「ありがとう」とお礼を言う。

 ――紫月はいつも、私の意思を大切にしてくれる。縁結びの神様にとって、仕事の範囲外のことも、面倒なことも。

 もちろん嬉しいけれど、やっぱりいまだに、どうして?とは思う。

 紫月にそんな風に気に掛けられる節なんて、どうにも思い当たらない私は、毎度のことながら不思議に感じてしまうのだった。




 まずは、神社を出て行ってしまった男の子を、紫月と一緒に探しに行くことにした。千代丸くんと琥珀くんは、神社でのお仕事があるため来ていない。


「あ! いた!」


 男の子の姿はすぐ見つかった。神社の敷地のすぐ隣の公園で、ひとりで木登りをして遊んでいたのだった。


「こんにちは」


 私が声をかけると、男の子は木の上で目をぱちくりとさせる。そして木から飛び降りると、私と紫月に向かってこう言った。


「お兄ちゃんとお姉ちゃん、俺の姿が見えるの? 俺、死んじゃってるんだけど」