本当に、どうして紫月は私のことをこんなに慮ってくれるのだろう?

 大叔父さんの知り合いだからといって、ほとんど初対面の私を自分の屋敷に置いて、衣食住を提供してくれて。結婚すると言われたのにはびっくりしたし、もちろんいまだにそんな気はないし。

 私を嫁にしたいという彼の想いを断ってひとり立ちすると言ったのにも関わらず、彼は変わらずに私に優しくしてくれる。

 それに、先日はおばあさんに自分のことを思い出してほしいという、おじいさんのお願いを叶える手伝いまでしてくれた。彼が参拝に来たときは、紫月のこれれまでの基準からすると、あのおじいさんの願いは叶えるのは難しい、諦めてもらうしかないという流れだったのに。

 私が諦めたくないと言い張ったら、お菓子作りの手伝いまでして協力してくれた。今思い返せば、神様に料理のサポートをしてもらうなんて、私も大それたことをしたものだとちょっと怖くなってしまう。

 あの時勝手に神社から飛び出したのにも関わらず、すぐに追いかけてくれて夜羽さんとかいう仲の悪い神様の使いからも、守ってくれたし。

 紫月が私にどうしてここまで寄り添ってくれるのは考えても考えても分からない。直接訪ねても「愛しているからに決まっているじゃないか」なんていう、殺し文句で誤魔化されてしまうし。

 だけど紫月はとても心が広く、深い優しさを持っている人だということは、私にも分かってきていた。

 ――まあ、だからと言って結婚は、ねえ。そもそもいきなりプロポーズって、そんなのあり? 普通こういうのはお付き合いして、時間をかけて愛を育んでから考えるものじゃない?