今までの彼からのからかいで感じた気恥ずかしさとは少し種類が違う気がした。心の奥底からじんわりと、熱い何かが湧き上がってくるような、不思議な感覚だった。

 ――しかし。


「というわけで、いい加減結婚しようか俺たち。早く世継ぎも欲しいところだし」

「よ、世継ぎって!?」


 いけしゃあしゃあととんでもないことを言ってのける紫月。その「世継ぎ」を作るための行為を思わずぼんやりと想像してしまい、恥ずかしくて頬が熱くなるのを感じた。

 ひ、人がせっかく紫月のかっこよさに純粋にドキドキしていたところだったのに! まったくこの人はいつも!


「と、とにかく! もうお昼だよ。早く神社に戻ろうよ」


 私は恥ずかしさを隠すように、歩く速度を速めた。紫月は苦笑を浮かべて、私に歩調を合わせた。


「おお、そうだったな。ちょうど腹も減ってきた」

「ええ……。今さっきマフィンを食べたばっかりじゃないの」

「前にも言っただろう、俺は大食漢だと。今日の十五時のおやつも楽しみにしてるからな」

「食いしん坊だなあ……。まあいつもおいしそうに食べてくれるのは、嬉しいけどね」


 そんなこと話をしているうちに、神社の赤茶けた鳥居が見えてきた。

 ――それにしても。

 さっきの不思議な気持ち、なんだったんだろう。紫月が変なことを言ったせいで、すぐに消えてしまったけれど。

 気になったけれど、紫月と一緒に鳥居をくぐったら、従者の何人かに「紫月さま! 陽葵さま! お帰りなさいませ!」と盛大に出迎えられたので、自然と意識の隅に追いやられてしまった。