少しはお手伝いになったかもしれないけど、今回のことはふたりが長い間深く愛し合ったゆえの結果なんだと思う。

 そう考えていた私だったけれど。


「いや、偶然ではないだろう」


 紫月は遠い目をして空を眺めながら、はっきりとそう言った。夏の残り香のような白い雲と紺碧の空が清々しい。今日は晴天だ。


「え?」

「あのチョコチップマフィンには、君の想いが深く込められていた」

「想い……?」

「そうだ。なんとかご老人の助けになりたいという、情愛の念がな」


 確かに、マフィンを作っている最中は「チョコチップマフィンが何かの助けになれればいいなあ」とは思っていたけれど。

 でも、お菓子を作る時は、食べてくれる人のことを考えながら作業をすることが、私にとっては当たり前のこと。大叔父さんがいつも、「料理は愛を込めて作るんだ。そうすれば、おいしさ百倍だよ」って言っていたから。

 だから紫月の言っていることがあまりピンと来なくて、私はきょとんとしてしまった。


「やはり……。俺の目に狂いはなかったな」

「え?」


 今度はますますわけのわからないことを言われて、目をぱちくりさせる私。


「君は……陽葵は、俺にとって必要不可欠な存在だ。何よりも大切だ」


 やけに真剣な語り口だったから何事かと思っていたら、いつものわけのわからないからかいのバリエーションだったみたいだ。

 だけど真っすぐに美しい瞳で見つめられ、そんなことを言われてしまえば、不覚にも胸が高鳴ってしまう。