冷やされて固くなったケーキにナイフを入れていく。表面はカラメル色の焦げがまばらについていたが、断面はきれいなクリーム色。底のクッキーは戸棚にあった市販の物を砕いたが、細かくして丁寧に敷き詰めたため、ボロボロにならずきれいにケーキに貼り付いてくれている。

 大叔父さんがよく使っていた、古伊万里のケーキ皿にチーズケーキを乗せる。彼はもういないのだと、その瞬間なぜか深く実感した。涙が出そうになるのを、ぐっと堪える。

 そして、蒸らしておいたティーバッグをティーカップから取り出す。うん、いい色の紅茶になっている。

 使い古したお盆の上に、ケーキと紅茶を二セット、ポーションミルクとシュガーポットを添え、居間へ向かった。


「はい、どうぞ~」

「……ありがとう」


 微笑みながらそう言った彼からは、ひどく懐かしいものを感じた。――なんだろう、この感覚。

 昔どこかで会ったことがある……? 大叔父さんのお店で会ったのかな? いや、でもこんな個性的な人に会っていたら忘れ無さそうだよね……。

 きっと、大叔父さんがいつも座っていた場所に彼がいるからだろうな。そして、最近ひとりだった私を部屋で待っていてくれたから、懐かしい気持ちになっているだけだ。

 と、なぜか抱いてしまったノスタルジックな気分は気のせいだと思い込むことにした。


「いや、これはなかなか。おいしいぞ、うん」

「ほ、本当ですか⁉」


 バクバクと、いい食べっぷりでチーズケーキを口に運んでいく彼。しかし食べ方がきれいなためか、まったく下品な印象は受けず、小気味よさを覚える。そもそもが見目麗しいからかもしれない。