助けてくれたお礼にお茶でも飲んでいきなさいとおじいさんが言ってくれたので、私と紫月は甘えることにした。まずは、彼から話を聞かなくてはならないし。

 なんて、真面目に思っていた私だったけれど。


「いやー、しかし。お似合いの若夫婦だね。彼は役者さんか何かかい? いい男だねえ」

「えっ……! いや、その……」


 意外にお茶目だったおじいさんが、私と紫月のことをからかってきたので戸惑ってしまう。

 わ、若夫婦って。周りから見たらそんな風に見えるのかな? っていうか、私紫月と本当に結婚するつもりはないんだけど……。

 すると紫月は満足げに頷きながら、こう言った。


「そうだろう、ご老人。俺と陽葵は愛し合っているからな。あなたと奥方のように、長い時を一緒に過ごしたいものだ」

「ははは! お熱いねえ。やっぱり若いもんはいいなあ」


 楽しそうに話をするふたり。

 ちょ、ちょっと! 別に愛し合ってはいませんから! 私まだ紫月のことよく知らないし! まあ今のところ恩はあるし、嫌いではないけれど。好きか嫌いかで言ったら、どちらかというと……好き?

 で、でも結婚する気はないんだから!


「わ、私たちのことは別にいいんです。……あの、おじいさん。おばあさんはやっぱり、おじいさんのことをもう忘れてしまっているのですか?」


 紫月と盛り上がって朗らかに笑っていたおじいさんだったけれど、私の言葉によって笑みに陰りができた。そんな顔をさせてしまった心がチクリと痛んだけれど、彼のお願いを叶えるためには聞いておかなければならない。