おじいさんの家の前に着いてインターフォンを押そうとした私だったけれど、ふと疑問に思ってその指を止める。

 昨日、私は少し話したとはいえ名前も知らない者同士だったし……。自宅の場所を本人から聞いたわけでもない。

 そんな私が、金髪の人間離れした美形を連れていきなりやってきては、おじいさんもびっくりするのではないだろうか。


「そういうものか? でも俺が何の前触れもなく陽葵の庭に入った時は、歓迎してくれたではないか」

「あ、あれは、その……。なんとなくっていうか……」


 紫月があまりにもかっこよすぎて、見惚れているうちに受け入れてしまっただなんて言えず、歯切れの悪い答えをしてしまう。


「なるほど。俺の愛が伝わり家にあげてくれたというわけか」

「ち、違います。とにかく、人間って防犯意識が高いの。いきなりお伺いしても、びっくりしちゃうんじゃないかと思うんだ」

「そうなのか? 人間とは面倒なものだな。あ、陽葵はまったく面倒ではないが」

「そ、そう……」


 そんなことを紫月と話している時だった。ガッシャーンと、何かが割れるようなけたたましい音が、おじいさんの家から響いてきた。内容はよく聞き取れなかったけれど、女性の悲鳴のような声も微かに聞こえた。


「……! な、何かあったのかな!?」

「とりあえず入ってみるか。通りがかりに物音が聞こえて心配になったと言えば、あやしくないんじゃないか?」

「うん!」