紫月の言わんとしていることが分からなくて尋ねると、彼は丁寧にこう説明してくれた。

 生物は輪廻転生をして、現世での命が亡くなっても、天国でしばらく過ごした後、来世で新しく生まれ変わることができる。

 そのことを知らないのは人間だけで、神やあやかし、動物たちも、自然にそれを受け入れているのだそう。

 だから、人間以外の生物はその時の命に縋りついて何かを達成しなければならないという思いは薄く、日々をあるがままに生きている。

 神である紫月も例に漏れずそのような考えで、おじいさんも彼の妻ももう残り僅かな寿命なのだから、来世でまた出会えればよいのではないかと思ってしまったんだそうだ。


「人間はその時の命をとことん大切にし、悔いの残らないように人生を全うする種族だということを、つい失念していたよ。神として、参拝客の思いを汲まなかったことは不本意だ。だから、俺もあの老人の願いが叶うように協力しよう」

「ほんと!?」


 嬉しくなった私は、瞳を輝かせる。あのおじいさんの切な願いを叶えることを、神様の紫月が手伝ってくれるなんて。こんなに頼もしい味方はいないだろう。

 ――しかし。


「……とは言ったものの、もうあの老人には時間がない。今さら俺が導を示しても間に合わないだろう」

「え? そうなの?」


 ではどうするのだろう?

 紫月は罰悪そうに笑う。


「だから今回はまあ……。直接手を貸すしかないだろう。私と陽葵で」

「あ……そうなんだね」