確かに感情的になって唐突な行動に走ってしまったと思う。私は素直に反省した。

 すると紫月は、困ったように笑って私の頭を軽く撫でる。「仕方ないなあ」とでも言いたげな、温かい表情と、優しい手の感触。不覚にも、心臓が大きく鼓動してしまった。


「まあ助けることができたからいい。あの下っ端妖怪が言っていた夜羽とは、この辺一帯の山の神だ」

「山の神?」


 この地域には、潮月神社側の海とは反対側に標高数百メートル級の山々が連なっている。山の近くの道路には動物注意の看板が立てかけられていたり、山菜や果物が自生していたりと、自然豊かな山だ。


「海の神である俺と、山の神である夜羽。以前はそれなりに仲良くやっていたのだが、事情があってあいつは私を恨んでいてな。俺が結婚して幸せになることが許せないのだろう。その予想はできていてから、陽葵を神社から出したくなかったのだ」

「じゃあ、神社から出なければ私は狙われないってこと?」


 紫月と夜羽が仲が悪くなった事情とやらも気になったけれど、自分の身が危険にさらされているらしいので、まずはその点を確認したかった。


「そうだ。あそこならば、俺の結界が張ってあるからな。部外者は絶対に侵入できないのだ」

「そうだったんだ……」


 従者のオオカミさんもその事情を知っていたから、私が外に出ようとしたときに止めたってわけらしい。