「へえ。そんなこだわりがあったのか」
「ボトム生地のクッキーはしょっぱめにして、ケーキ部分の甘みを引き立てるようにもしてたんですよ!」
ついつい、大好きだった大叔父さんのケーキのことを話してしまう私。初対面で名前も知らないのに、彼を前にするとポンポンと言葉が出てくる。
対面する彼の美しい瞳は、私が何を言っても許してくれるような懐の深さが刻み込まれているような気がして、不思議と気分を高揚させられた。
――久しぶりだなあ、こんな楽しい気持ち。
大叔父さんが倒れて、亡くなって。最近では心も落ち着いてきたけれど、ひとりで彼の残した部屋にいると、心から晴れやかな気持ちになんてなれるわけがなかった。
喫茶店も、さすがに私ひとりではやっていけないからもう閉じてしまったし。
その片付けやら、家に遺された遺品の整理やらに追われて今まで忙しかったけれど、今後ひとりで生きていくためにはそろそろ働き口を探さないといけない。未来のことを考えると、気が重かった。
だから本当に久しぶりだったんだ。不安を忘れて、こんな風に誰かと楽しく会話できることなんて。
「いや、それにしても惜しいな。――もうあの味が食べられないなんて」
本当に残念そうに彼は言った。大人の男性がケーキを懐かしんでいる姿がやけにかわいらしかった。
そこで私は「あっ」と思い出す。
「あの、もしよろしかったらなんですけど……」
「ボトム生地のクッキーはしょっぱめにして、ケーキ部分の甘みを引き立てるようにもしてたんですよ!」
ついつい、大好きだった大叔父さんのケーキのことを話してしまう私。初対面で名前も知らないのに、彼を前にするとポンポンと言葉が出てくる。
対面する彼の美しい瞳は、私が何を言っても許してくれるような懐の深さが刻み込まれているような気がして、不思議と気分を高揚させられた。
――久しぶりだなあ、こんな楽しい気持ち。
大叔父さんが倒れて、亡くなって。最近では心も落ち着いてきたけれど、ひとりで彼の残した部屋にいると、心から晴れやかな気持ちになんてなれるわけがなかった。
喫茶店も、さすがに私ひとりではやっていけないからもう閉じてしまったし。
その片付けやら、家に遺された遺品の整理やらに追われて今まで忙しかったけれど、今後ひとりで生きていくためにはそろそろ働き口を探さないといけない。未来のことを考えると、気が重かった。
だから本当に久しぶりだったんだ。不安を忘れて、こんな風に誰かと楽しく会話できることなんて。
「いや、それにしても惜しいな。――もうあの味が食べられないなんて」
本当に残念そうに彼は言った。大人の男性がケーキを懐かしんでいる姿がやけにかわいらしかった。
そこで私は「あっ」と思い出す。
「あの、もしよろしかったらなんですけど……」