朝起きて身支度をし、琥珀くんの作る朝食を味わったあと、参拝客のお願いを聞く紫月に付き合う。その後十時のおやつを作り、片づけをした後は昼食。

 午後も、おやつ作りの合間に紫月の仕事ぶりを眺めて過ごし、夕飯のあと入浴。そして紫月や千代丸くん、琥珀くんとまったりと過ごした後、就寝。

 他にも紫月の従者はたくさんいるけれど、みんな私にとてもよくしてくれている。でも、湯あみのお手伝いをしますとか、お着替えをいたしますなどと、自分でできることまでやろうとするのでそれはお断りしている。

 お風呂は自分のペースで体を洗いたいし、着替えなんて手伝ってもらうほど大変じゃないし……。

 位の高い人がそういうことを下々の者にさせるのは人間社会でもよくあることだけれど、私は別に自分が偉いとは思っていないので、そういったことを他人にさせるのは、くすぐったくなってしまう。

 さて。明日は何を作ろうかな。まだまだ熱いし、ぜんざいなんかいいかも。それともチーズケーキかな? まだここでは作っていないし。

 ――などと、頭の中のレシピ帳のページをめくっていると。


「……おや。どうやら参拝客が来たようだ。ちょっと俺は行ってくる」


 そう言うと、紫月は立ち上がって草履を履き、すたすたと歩き出した。


「行ってらっしゃいませ」

「ませですニャ!」

「私も行く!」


 いまだに塩大福を味わっている琥珀くんと千代丸くんは軽くそう挨拶するだけだったが、私は彼の後を慌ててついていく。

 人がご神体の前でお願いをして、紫月がその道しるべを示す光景を見るのは、私にとってはとても興味深かった。