「よし。それなら決まりだな。陽葵は我が神社の甘味係だ。明日から十時と十五時のおやつ作りを頼む。休みたいときは自由に休んでくれ」

「はいっ!」


 紫月の口頭による辞令を受けて、私は元気よく返事をする。

 明日から、紫月やその従者のために、おいしいお菓子を私は作る。優しかった大叔父さんの味を、彼らに味わってもらう。

 親戚の人たちに家を追い出されそうになった時はどうなることかと思ったけれど、とりあえずしばらくの私の生活の方向性が決まった。

 ――ねえ、大叔父さん。

 私、大丈夫そうです。あなたが教えてくれた、お菓子作りの技術のおかげで。

 私に製菓の手ほどきをしてくれた大叔父さんの優しい笑顔を蘇らせながら、甘味係としてのこれからの潮月神社の生活について、私は思い描くのだった。