他にやることもなさそうだし、毎日十時と十五時に合わせてお菓子作りをするなんて、考えただけでも楽しそうだ。


「あっ!」


 そこであることを思いついた私は、思わず声を上げる。


「どうしたんだ陽葵?」

「私の仕事あるじゃない! ここにいるみんなのためにおやつを毎日作るの!」


 料理番は琥珀くんがいるからということで諦めていたけれど、お菓子を作るのが苦手とあらば、それがそこそこできる私が打ってつけじゃないかな?


「おお、なるほど。それはいいな。みんな琥珀のおやつには飽きていたところだからな」

「炊事係としては、私も毎日みんなに申し訳ないと思っていたので大歓迎ですが……。しかし、陽葵さまに働かせるなど……」

「いいのいいの! 私、事情があって仕事を探していたんだから。それに、じっとしているよりは何かしている方が性に合っているから」


 主の婚約者である私の立場を琥珀くんは気にしているようだけど、実際に結婚するつもりはないし、あまりかしこまってもらいたくない。仕事をして早くお金を貯めなくてはいけないし。


「そうなのですか? 陽葵さまがそうおっしゃるのなら。……いや、しかしごまプリン本当においしいですね。これが毎日食べられると思うと幸せの極みです」


 ごまプリンを食べ終わった琥珀くんが、うっとりとした面持ちで言う。そこまで喜んでくれるのなら、こっちとしても作りがいがある。

 紫月はぽんっと膝を一度叩くと、私をまっすぐに見つめて、こう言った。