私は三つのプリンをお盆に乗せて、先ほど入った大広間へ持っていく。ふと、他の人の分は大丈夫なのかと紫月に尋ねたが、出来上がった料理が眼前にあれば、彼の力によって夢幻に増殖できるから問題ないのだとか。

 え、それってすごくない? 材料費も手間も少ししかかからないじゃない。喫茶店で使ってもらえたら、利益がすごく増えそう……などと思わず考えてしまう私であった。


「琥珀が作った物とは、もう見た目からして違うな」

「本当ですね」


 ごまプリンの表面を見ながら、紫月が感心したように言う。琥珀くんを貶めたわけではなく、素直な感想のような言いぶりだった。琥珀くんも少しも傷ついた様子もなく、目を見開いてプリンを凝視していた。


『いただきます!』


 私たちは声を揃えてそう言うと、木のスプーンでごまプリンをすくい、口に運んだ。――すると。


「……うまい!」

「お店で売っているプリンみたいです! 陽葵さま!」

「い、いやー。大叔父さんはもっとおいしく作れるんだよ」


 褒めちぎられて謙遜する私だったが、自分でもおいしくできたと思った。大叔父さんに教えられた通りの分量と手順をきっちり守ったおかげだろうけれど。


「これからも、琥珀の代わりに陽葵におやつを作ってもらった方がいいんじゃないか?」


 プリンをあっという間に完食してしまった紫月が、琥珀くんをからかうように言う。琥珀くんはぎこちなく微笑んだ。


「い、いやー。面目ないですね……。しかし、紫月さまの婚約者に毎日お作りしていただくわけには」

「ええ? 私なら毎日作ってもいいけど。お菓子作るの大好きだしね!」