仏壇に祈りを捧げていた彼に見とれていたところで、不意に目を開いた彼にそう言われたので、焦る私。

 ――なんだか、さっきから私おかしいぞ。いくらイケメンだからって、見とれすぎだよ。自分がそんなに面食いだった覚えはないんだけど……。

 なんだか知らないけど、彼を見ていると心が揺さぶられてしまう。


「あ、あの。大叔父さんとはどんなお知合いだったのか、聞いてもよろしいでしょうか?」


 近年の喫茶店の常連さんなら私も知っているはずだけど、彼には見覚えがない。かといって、若い彼が大叔父さんの古くからの知人とは思えないし……。

 一体どういう縁があったのか、気になった。


「――ああ。十二、三年前だろうか。彼のお店に俺はよく行っていたのだ」


 十二、三年前。三歳の時に両親を亡くした私が、大叔父さんに引き取られてしばらく経った頃だろう。そんなに昔だったとしたら、私も幼かったしその頃の常連さんの顔もあまり覚えていない。

 しかし、そのくらい前だとしたら眼前の彼もかなり若い頃では……? 多く見積もっても、その時は十代後半くらいだろう。大叔父さんのお店は、渋めの中年以降のお客さんが多かったから、珍しい常連さんだなあ。


「彼の焼くケーキは本当に美味だったな。コーヒーや紅茶に合うんだ、これがまた」

「あ! 分かりますか⁉ 私も本当に大好きで!」

「特にベイクドチーズケーキが俺は好きだったな。甘さは控えめなのに、チーズの風味が濃くて」

「そうなんですよ! 小岩井農場から取り寄せたクリームチーズを必ず使っていたんです。焼いた後も必ず一晩寝かせて、味を馴染ませてからお客さんに出していたんですよ~」