障子紙越しから日の光がうっすらと差し込んでいる。あの後、結局私は朝まで眠り続けてしまったのだ。

 気分はよかった。大叔父さんが亡くなってからずっと、毎晩寂しさを抱えながら眠り付いていたけれど、昨日はそんなことを考える暇がなかったせいかもしれない。

 布団から這い出ると、きれいに畳まれた桜色の浴衣が一式、枕元に置いてあるのが目に入った。

 これって、私の着替えってことだよね?

 そう解釈した私は、昨日から着ていた服を脱いでから浴衣に袖を通す。浴衣の着付けは、以前に友人と花火大会に行ったときにネットの情報を参考にしながら見よう見まねでやったことがあるので、なんとなくは知っている。――なんとなく、だけど。

 部屋の隅に立てかけられていた姿身を見て、パッと見不格好ではないように浴衣を纏った後、私は部屋から出た。

 ――すると。


「ニャッ!」

「きゃっ!」


 何か、柔らかいものとぶつかったので小さく悲鳴を上げる私。聞こえてきた声で、何かの正体はすぐに察する。


「千代丸くん! ごめんね」

「いえー! お目覚めになられたのですニャ! ちょうど様子を見にお部屋に行こうと思っていたところでございますニャ」

「そうだったんだね、ありがとう。あれ、今って何時なのかな?」

「午前十時前ですニャ。朝食の時間にも一度参ったのですがニャ、陽葵さまはまだお休みになられていて……」

「もう十時だったんだ! ごめんね、気を遣わせちゃって。――あの、ところで紫月はどこにいるの?」


 そう尋ねると、千代丸くんは口元をにやりという形にした。