私となぜか一緒になりたいらしい紫月。私が結婚を断るとなると、彼にとっては私を置いておくメリットがなくなる。だから、そういうことならばもう出て言ってくれ、と言われるかもしれないと、私は危惧していたのだった。

 まあ、そんな身も蓋もない言い方をするような人には思えなかったけれど、多少難色を示されても仕方ないだろうと考えていた。

 でも彼の反応を見る限り、私に婚礼の意思がないことを、それほど気にしていないようだった。


「仕事先が見つかってある程度お金が貯まるまでか。この先数か月ってところか?」

「うん、それくらいになるかなと思う」

「そうか。それだけあれば十分だ」


 にやりと、どこか企むように紫月が笑ったので私は眉をひそめた。


「それだけ期間があれば、君は俺と結婚したくなるはずだから」


 どこからそんな自信が出てくるのか。少しの迷いもなく言い切るような口ぶりだった。

 やけに物分かりがいいなあと思ったけれど。結婚を諦めたわけじゃなかったんだ……。


「そ、それはちょっとわからないけど」


 今のところそんな気は皆無です。

 でもはっきりとそう言うのはちょっと心苦しかったので、戸惑いながらもやんわりと言う。


「大丈夫。俺にはわかるから」

「…………」

「まあ、とりあえずそういうことなら、働き口はこの場所で探せばいい。わざわざ外に行くことは無いだろう。仕事内容については、これから検討しよう。労働に見合った対価を、人間の貨幣でちゃんと支払えばいいだろう?」