琥珀くんが作ってくれたお粥を、笑顔の千代丸くんと私をからかう紫月さんに見られながら食べたこの時間は、鬱々としていた心を温かい毛布で包んでくれるような、そんなじんわりとした優しさを感じられる瞬間だったのだ。


「そうですか。それはよかったです」


 琥珀くんはにっこりと笑ってそう言ってくれた。千代丸くんも猫口を上向きにして、朗らかに微笑んでいる。紫月さんはいつも通り余裕綽綽そうな笑みを浮かべていた。
 
 すると琥珀くんは、「お代わりを持って参ります」と言って部屋から出て行った。千代丸くんも「手伝うニャ」と、ついて行ってしまった。

 不意に紫月さんとふたりっきりになってしまった。彼が微笑ましそうな顔をして私を眺めている。


「ここにいれば、ずっと楽しく暮らせる。心穏やかに、のんびりと」


 目を細めて紫月さんが言う。温かいご飯を食べただけで泣いてしまった私を、まるで安心させようとしているみたいだった。

 確かに、紫月さんも彼の従者である千代丸くんも琥珀くんも、私を歓迎してくれているようだ。今までなんの関わりもなかった私を。

 血が繋がっているにも関わらず、ニヤニヤしながら私を追い出そうとした親戚とは、えらい違いだ。

 ――でも、それに無条件に甘えてはいけない気がする。


「そして俺と愛を育もう」

「愛を育く……いやいや。あの、今後のことなんですけど」


 ナチュラルに結婚の方向にもっていこうとする紫月さんの言葉に流されまいと、私は首を横に振りながら言う。