目が覚めたら、ふかふかの布団をに全身がくるまれていた。自分の部屋の掛布団とは少し匂いが違う気がしたけれど、いまだまどろみの中にいる私は、気に留めないことを決め込む。

 えっと、私いつの間に眠ってしまったんだっけ? すごく不思議で驚かされるような夢を見た気がするんだけど。

 大叔父さんの四十九日のあと、いきなり紫月さんっていう謎の美形に求婚されて、潮月神社に連れて来られたこと思ったら社がいきなり豪邸に変わって、猫や狐耳をはやした男の子に出迎えられるとかいう。

 突拍子もないし、あまりにもメルヘンな夢すぎる。きっと四十九日が終わって気が抜けてしまったんだろうな。

 そうひとり納得し、私はようやくしっかりと眼を開く。――すると。


「ニャっ! 目が覚めたのですね陽葵さま~! 二時間ほど眠ってらっしゃいましたニャ!」


 寝っ転がっている私の傍らには、作務衣を着たモフモフの茶トラ猫がいた。私が目覚めたことを喜んでくれたのか、少し涙ぐみながら微笑んでいる。


「夢じゃなかった……」


 私は敷布団の上で上半身だけ起こし、頭を抱える。よく見たら、ここは大叔父さん宅の自室の洋間ではなかった。落ち着いた香りの漂う、畳敷きの和室だ。窓際の障子は、薄っすらと桜の花弁が散っている柄だった。


「え、ニャんと申されたのです?」

「……なんでもないわ」


 かわいらしく首を傾げる茶トラ猫くんに、私は苦笑を浮かべて答える。出会った瞬間は疲れもあってか、驚愕して倒れてしまったけれど、幾分か睡眠をとった今、落ち着いた私の心は彼を受け入れつつあった。