そんな彼が、倒れてからわずか数か月でこの世からいなくなってしまうなんて、俄かには受け入れられなかった。

 たぶん、いまだに完全に受け入れているとは言い難い。今にも背後から「コーヒーを入れたよ。陽葵、一緒に飲もうか」なんていう、声が聞こえてきそうだ。

 もう明日は、彼の四十九日だというのに。


「早いなあ……」


 なんてことを独り言ちて、ぼんやりと大叔父さんとの思い出に浸っていた――その時だった。


「え……⁉」


 いつの間にか、縁側から望める庭の隅に、ひとりの男性が佇んでいたことに気づいた。

 インターホンを鳴らされた記憶もなかったし、「ごめんください」と玄関から声を掛けられた覚えもない。客観的に考えれば、不法侵入だろう。

 だけど不思議と怖さは皆無だった。「庭のお手入れを最近してなかった……。雑草伸び放題だし、庭木も葉が生い茂っていて、恥ずかしいなあ」と、まず私は思った。

 紺色の浴衣をさらりと着こなした彼は、二十代中盤くらいだろうか。金色の煌びやかな短髪は毛先を程よく遊ばせていて、長めの前髪は目にかかっている。染めているにしてはやけに自然な色合いだなあと感じた。その髪の隙間から見える瞳は、雲ひとつない空のような紺碧色で、神秘的な光を湛えていた。

 切れ長の瞳に、すっと通った鼻筋、形の良い薄い唇。身長は高めで細身だが、浴衣の裾から覗く腕には程よく筋肉が付いている。どこか浮世離れした、絶世の美形だった。

 しかし纏っている気配はひどく穏やかで、心が落ちている私は、不意に涙ぐみそうになるくらいに優しく感じた。

 ――わ、私ってば。知らない人に、なに心を動かされてるの。