もうひとりは、一見十代後半の人間の少年に見えるけれど、こげ茶色のサラサラとした髪の隙間から、とんがった狐のような耳がにょきっと生えている。とんぼが舞っている水色の浴衣を着て、作業しやすいようにか、紐で袂をたすき掛けしている。しかしその裾からは、ふさふさで黄土色の尻尾が覗いていた。

 ふたりとも、私の知識からすると人間のくくりからは大きく外れる。あり得ない。あり得ない生物だ。

 そして、よく見てみると。

 屋敷の渡り廊下をせわしなく移動している人型の何かは、眼前に居るふたりのように、一様に獣のような耳が頭頂部に生えていた。

 先ほどまで遠目であまり見えなかった、境内を履き掃除している従者らしき人(?)にも、オオカミのような灰色の三角形の耳ともふもふの尾が生えている。


「動物が……立って、歩いて、しゃべ……」


 あまりに現実離れしている光景だった。ちょっと頭が追い付かなかった。

 混乱極まったせいか、私はその場で倒れて意識を失ってしまったのだった。