この声は、昨日の――⁉

 はっとして顔を上げると、開けていた障子の向こうの縁側に、彼が佇んでいた。背中には太陽を背負っていて、まるで後光でも差しているかのように見える。

 そう、声の主は昨日突然大叔父さんの線香をつけにやってきて、なぜか私を抱きしめて去っていった、神秘的なあの人だったんだ。


「え……だ、誰……?」

「やっべくっそイケメン!」


 芳江さん夫妻は呆気にとられた表情で彼を見ていて、彼らの子供たちは、突如現れた正体不明の美形を見て、興奮した様子だった。


「陽葵、迎えに来た」

「え、あ、あの……」

「昨日言っただろう。『明日迎えに行く』と」

「いや、それは」


 もちろん言いましたけど……。でも全然意味が分かっていなかったし、いきなり現れるからびっくりするじゃない!

 そもそも私、昨日名前を名乗ってないんだけど! なんで知ってるんだろう? 大叔父さんから聞いたのだろうか。


「き、君は誰なのかね⁉」


 芳江さんは彼に見とれてポーっとした表情になっていたけれど、彼の夫は気を取り直したのか、不信感を露わにして言った。


「俺か? 俺は陽葵の夫になるものだ。婚礼の準備が整ったので、迎えに来たのだ」

「は……え……おおおお夫? こここここ婚礼……?」


 オットセイのような、ニワトリのような、変な声を上げてしまう私。彼から飛び出してきたのが、あまりにも予想外のパワーワードだったので、頭の中がはてなマークで満たされてしまう。