カーテンの隙間から差し込む朝日に「眩しいな」と感じた。その瞬間、一瞬前まで覚えていた夢の内容を、私はあっさりと忘失してしまった。
何の夢だったっけ……? 確か大叔父さんが生きていて、私が幼かった頃の懐かしい夢だった気がするんだけど。なんでこんなにすぐに忘れちゃったんだろう。
不思議だったけれど、夢なんてそんなものだろう。私は「まあいいや」とあまり気にしないことにし、布団から這い出て朝の身支度を始めた。
*
「この遺言状は無効だねえ、陽葵ちゃん」
大叔父さんのひとり娘――私にとっては従弟叔母にあたる芳江さんは、厭味ったらしく言った。
四十九日の法要を近所のお寺で終わらせた後。予定通り、大叔父さんの親族と、わが家へとやって来た私。
大叔父さんの遺産をどうするかの話し合いの席だったが、きっちりと彼が書いた遺言状があったため、それを確認するくらいだろうなあと思っていた私。
だから、昨日突然現れた謎の美丈夫のことを「あの人いったい誰なんだろう」とぼんやりと考えていて、あまり親戚たちの話を真面目に聞いていなかったのだけど――。
遺言書が無効って? 一体どういうこと……?
「え……。で、でもこれはちゃんと大叔父さんが書いたもので……!」
「ええ、それはそうね。この字は確かにお父さんの物だわ」
「だったらどうして無効なんですか……⁉」
書面には、「遺言者海野小次郎は、本遺言書で次のとおり遺言する。第1条 遺言者は、遺言者の所有する下記の財産を、遺言者の従姪孫である海野陽葵に相続させる」とあって、その下にずらずらと私に相続させる目録が記してある。
何の夢だったっけ……? 確か大叔父さんが生きていて、私が幼かった頃の懐かしい夢だった気がするんだけど。なんでこんなにすぐに忘れちゃったんだろう。
不思議だったけれど、夢なんてそんなものだろう。私は「まあいいや」とあまり気にしないことにし、布団から這い出て朝の身支度を始めた。
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「この遺言状は無効だねえ、陽葵ちゃん」
大叔父さんのひとり娘――私にとっては従弟叔母にあたる芳江さんは、厭味ったらしく言った。
四十九日の法要を近所のお寺で終わらせた後。予定通り、大叔父さんの親族と、わが家へとやって来た私。
大叔父さんの遺産をどうするかの話し合いの席だったが、きっちりと彼が書いた遺言状があったため、それを確認するくらいだろうなあと思っていた私。
だから、昨日突然現れた謎の美丈夫のことを「あの人いったい誰なんだろう」とぼんやりと考えていて、あまり親戚たちの話を真面目に聞いていなかったのだけど――。
遺言書が無効って? 一体どういうこと……?
「え……。で、でもこれはちゃんと大叔父さんが書いたもので……!」
「ええ、それはそうね。この字は確かにお父さんの物だわ」
「だったらどうして無効なんですか……⁉」
書面には、「遺言者海野小次郎は、本遺言書で次のとおり遺言する。第1条 遺言者は、遺言者の所有する下記の財産を、遺言者の従姪孫である海野陽葵に相続させる」とあって、その下にずらずらと私に相続させる目録が記してある。