切なそうにそう言って、紫月は私を優しく、しかし強く抱きしめた。

 ――やめて。そんなことをしたら、ますます涙が止まらなくなってしまう。私は彼の胸に顔を押し付けながら、涙を流し続ける。

 ――すると。


「ニャ―!」

「紫月さまっ! 陽葵さまー!」


 かわいらしい猫と少年の声が響いてきて、私は紫月に抱きしめられたまま声のした方を向く。すると、そこには。


「千代丸くん! 琥珀くん! 他の従者のみんなも!」


 二本足で立つ猫と、狐耳を生やした少年が、私たちの元へと走り寄ってきていた。神社で暮らしていた時に一緒に過ごした他の従者のみんなも、それに続いている。

 そして無残な姿となっていた神社も、二年前に一緒に過ごした立派な日本家屋に姿を変えていた。さっき私が祈りを捧げた社だって、神様の居場所に相応しい荘厳で美麗な佇まいとなっている。

 ――そっか。紫月の力が戻ったから。彼が命を吹き込んだ従者たちも、彼の力によって成り立っていた神社全体も、あの時の姿に戻ったんだね。


「――ありがとう。俺も、みんなも……陽葵のおかげで、こうして戻ってこられた」


 私の頭上で、紫月がしみじみと言う。涙ぐみながら、私を抱きしめたまま。涙が落ち着いた私は、悪戯っぽく笑ってこう言う。


「……そうだよ。もう、二年間もずっとひとりきりで、紫月のことを思い続けた。毎日毎日、ここに祈りに来た。本当に寂しかったんだからね」

「もう、寂しい思いは絶対にさせないよ。――陽葵、結婚しよう。今度こそ」