持っていたドーナツの端っこが、まるで誰かが齧ったかのように突然欠けた。え!?と驚いていると、ドーナツを齧った存在は、じわじわと、段々と、姿を現した。
最初は人の形の輪郭が。そしてそれに徐々に色が付き始める。最初に視覚が捉えたのは、煌びやかな星のような、黄金色の頭髪。次に見えたのは、群青色の浴衣、羨ましいくらいに白い素肌――。
はっきりとその姿を現したそれは、私の手からドーナツを取って、もぐもぐとおいしそうに食べていた。本当に、おいしそうに。満足げな笑みを浮かべて。
私は自分の目を疑ってしまい、呆然としてそんな彼を眺めることしかできない。――夢じゃないんだよね? 私の願望が見せた幻じゃないんだよね?
彼は今、私の目の前に存在しているんだよね?
そしてひとつを食べきった後、その人物は私に微笑みかけて、こう言ったのだ。
「やはりうまいな。俺の愛する陽葵の豆腐ドーナツは。初めて会った時にも、そう思ったのだよ」
二年ぶりに聞く、紫月の優しくてどこか色気のある声。私に容赦なく甘いことを言ってくるその様子は、何ら変わっていなかった。
「紫……月!」
感極まって、私は思わず紫月に飛びついてしまった。「わっ!」と、頭上から彼の驚く声が響いてきた。しかしすぐに、私の頭を彼の大きな掌が優しく包み込む。
「待たせたな、陽葵」
「もう……ほ、本当に……! 待っ……たんだからねっ! 遅いよっ。も、もう……」
泣きながら、たどたどしく私は言う。しかし頬を伝う温かい涙の感触は、とても心地いい。
「寂しい思いをさせて、すまなかった……」
最初は人の形の輪郭が。そしてそれに徐々に色が付き始める。最初に視覚が捉えたのは、煌びやかな星のような、黄金色の頭髪。次に見えたのは、群青色の浴衣、羨ましいくらいに白い素肌――。
はっきりとその姿を現したそれは、私の手からドーナツを取って、もぐもぐとおいしそうに食べていた。本当に、おいしそうに。満足げな笑みを浮かべて。
私は自分の目を疑ってしまい、呆然としてそんな彼を眺めることしかできない。――夢じゃないんだよね? 私の願望が見せた幻じゃないんだよね?
彼は今、私の目の前に存在しているんだよね?
そしてひとつを食べきった後、その人物は私に微笑みかけて、こう言ったのだ。
「やはりうまいな。俺の愛する陽葵の豆腐ドーナツは。初めて会った時にも、そう思ったのだよ」
二年ぶりに聞く、紫月の優しくてどこか色気のある声。私に容赦なく甘いことを言ってくるその様子は、何ら変わっていなかった。
「紫……月!」
感極まって、私は思わず紫月に飛びついてしまった。「わっ!」と、頭上から彼の驚く声が響いてきた。しかしすぐに、私の頭を彼の大きな掌が優しく包み込む。
「待たせたな、陽葵」
「もう……ほ、本当に……! 待っ……たんだからねっ! 遅いよっ。も、もう……」
泣きながら、たどたどしく私は言う。しかし頬を伝う温かい涙の感触は、とても心地いい。
「寂しい思いをさせて、すまなかった……」