海風と波音だけが場を支配する中、私は長い間そう祈り続ける。しかしそれ以外の物音が聞こえてくることはなく、神社も廃墟のままだった。

 戻ってこない……? 紫月、もしかしてもう消えちゃったの?

 月湖さんに言われたことを思い出す。私が紫月のことを覚えて、深く想っていたから彼はかろうじて生きながらえていたのだと言っていた。彼が復活するためには、私の深い愛が必要だということも。

 私の気持ちが足りない……? もしかして、それで紫月が戻ってこないの?

 ――まさか。

 そんなわけない。そんなわけ、ないじゃない。

 だって。

 この二年間ずっとあなたの温もりに恋焦がれ続けて。そしてその気持ちはどんどん強まるばかりで。

 今だって、あなたさえ居れば何もいらないという狂おしいほどの想いを抱いて、祈っているのだから。


「もう! いい加減にしてよ!」


 私はうんともすんとも言わない社に向かって、そう叫ぶ。――そして。


「紫月が出てこないのなら、私がこの豆腐ドーナツ、もう全部食べちゃうからね! あとで欲しがっても知らないんだからっ」


 口を縛っていたビニール袋を乱暴に開けて、私は豆腐ドーナツを乱暴に齧る。パクパクパクパクと、次々に口の中に押し込んでいく。紫月への気持ちとか、出会いから今までのこととか、二年間の寂しさとか、いろいろな思いでかき乱された心を、やけ食いするドーナツと共に胃袋に押し込んでいく。

 ひとつ目が食べ終わり、気が済まない私はふたつ目に手を伸ばす。そして、迷わずにまたかぶりつこうとした――。

 その時だった。