「はは……。我ひとり、馬鹿みたいではないか。神の分際で人間より狭量な心しか持ち合わせていないなど、情けないとしか言えぬ」
「本当にそうです。あなたはいつもいつも嫉妬深くて、心配性で。あなたの愛が重いと鬱陶しく思ったことは、一度や二度じゃないですからね」
月湖さんのその言葉に一瞬驚く私だったが、彼女の表情を見て少し笑ってしまった。ジト目で夜羽を見ていたけれど、口元には笑みが零れている。それは心の通じ合った人に対してのみできる、からかいだったのだ。
夜羽は顔を引きつらせる。
「相変わらず辛辣だな、月湖は」
「そりゃ、辛辣にもなりますよ。人様にこんなに迷惑をかけておいて。さ、もういいでしょう? 紫月さまと陽葵さまをお許しになってください」
「…………」
夜羽は口を噤むと、私の方に視線を合わせた。どこか気まずそうな、バツの悪そうな顔をして。
「あの馬鹿に、いつまで寝ているんだと言ってこい。お前が今手に持っている、あいつの大好きな甘味を持ってな」
「……!」
しばらくの間、驚きで声も出なかった。憎悪の塊である印象しかなかった夜羽から、どこか優しい気配が滲み出ている。消えない悲しみを抱えているはずなのに、私たちを解放しようとしてくれている。
月湖さんがいてくれたおかげだ。夜羽は彼女への愛が深いあまり、彼女を失った悲哀で我を忘れていただけだったのだと改めて思わされる。
「ありがとう……ありがとうございます」
嬉しすぎて、涙を堪えながら私は言う。月湖さんはゆっくりと頭を振った。
「あなたがお礼を言う必要はありません」
「本当にそうです。あなたはいつもいつも嫉妬深くて、心配性で。あなたの愛が重いと鬱陶しく思ったことは、一度や二度じゃないですからね」
月湖さんのその言葉に一瞬驚く私だったが、彼女の表情を見て少し笑ってしまった。ジト目で夜羽を見ていたけれど、口元には笑みが零れている。それは心の通じ合った人に対してのみできる、からかいだったのだ。
夜羽は顔を引きつらせる。
「相変わらず辛辣だな、月湖は」
「そりゃ、辛辣にもなりますよ。人様にこんなに迷惑をかけておいて。さ、もういいでしょう? 紫月さまと陽葵さまをお許しになってください」
「…………」
夜羽は口を噤むと、私の方に視線を合わせた。どこか気まずそうな、バツの悪そうな顔をして。
「あの馬鹿に、いつまで寝ているんだと言ってこい。お前が今手に持っている、あいつの大好きな甘味を持ってな」
「……!」
しばらくの間、驚きで声も出なかった。憎悪の塊である印象しかなかった夜羽から、どこか優しい気配が滲み出ている。消えない悲しみを抱えているはずなのに、私たちを解放しようとしてくれている。
月湖さんがいてくれたおかげだ。夜羽は彼女への愛が深いあまり、彼女を失った悲哀で我を忘れていただけだったのだと改めて思わされる。
「ありがとう……ありがとうございます」
嬉しすぎて、涙を堪えながら私は言う。月湖さんはゆっくりと頭を振った。
「あなたがお礼を言う必要はありません」