月湖さんに促されて、彼女とほぼ同時に鳥居をくぐる私。彼女の話だと、鳥居をくぐった瞬間、夜羽には存在を感知されるらしい。
いきなり襲われやしないかと不安になった私は尻込みしそうになってしまったけれど、「私がいるからきっと大丈夫です」という月湖さんの言葉を信じて、私は一歩踏み出したのだった。
――すると。
「月……湖……?」
すぐに彼は現れた。私の隣にいる白猫を、呆然とした面持ちで見つめながら。
「……そうです。月湖です」
そんな夜羽を見つめ返しながら、月湖さんは表情を変えずに言う。すると彼はそんな彼女に駆け寄り、その場でしなしなとへたり込んだ。
「もう二度と……もう二度と、会えないかと……! 月湖、月湖……!」
涙を流しながら、恋人の名を呼ぶ夜羽の姿を見て、心が締め付けられる私。今の彼からは、紫月や私に放っていた禍々しい気配は、微塵も感じられなかった。月湖さんとの思わぬ邂逅に、ただ感動している男がひとりいるだけだった。
「……しかしお前は、すぐに消えてしまうようだね」
悲しそうなに微笑みながら言った夜羽の言葉に、月湖さんは「ええ」と頷く。
やはり神様だからか、月湖さんが期間限定でこの世に戻ってきていることは、夜羽はすぐに察したようだった。
「私、ただあなたに会いに来たわけではないの。……紫月さまのことで」
月湖さんにそう言われると、夜羽は一瞬で憮然とした面持ちになり、今日初めて私の方を見た。冷たい視線を一瞬浴びせると、すぐに目を逸らしたけれど。
「あの男は……お前を犠牲にした。我が生涯ただひとり愛したお前を」
いきなり襲われやしないかと不安になった私は尻込みしそうになってしまったけれど、「私がいるからきっと大丈夫です」という月湖さんの言葉を信じて、私は一歩踏み出したのだった。
――すると。
「月……湖……?」
すぐに彼は現れた。私の隣にいる白猫を、呆然とした面持ちで見つめながら。
「……そうです。月湖です」
そんな夜羽を見つめ返しながら、月湖さんは表情を変えずに言う。すると彼はそんな彼女に駆け寄り、その場でしなしなとへたり込んだ。
「もう二度と……もう二度と、会えないかと……! 月湖、月湖……!」
涙を流しながら、恋人の名を呼ぶ夜羽の姿を見て、心が締め付けられる私。今の彼からは、紫月や私に放っていた禍々しい気配は、微塵も感じられなかった。月湖さんとの思わぬ邂逅に、ただ感動している男がひとりいるだけだった。
「……しかしお前は、すぐに消えてしまうようだね」
悲しそうなに微笑みながら言った夜羽の言葉に、月湖さんは「ええ」と頷く。
やはり神様だからか、月湖さんが期間限定でこの世に戻ってきていることは、夜羽はすぐに察したようだった。
「私、ただあなたに会いに来たわけではないの。……紫月さまのことで」
月湖さんにそう言われると、夜羽は一瞬で憮然とした面持ちになり、今日初めて私の方を見た。冷たい視線を一瞬浴びせると、すぐに目を逸らしたけれど。
「あの男は……お前を犠牲にした。我が生涯ただひとり愛したお前を」