「とんでもないです。こちらこそ、紫月さまを思い続けてくださって、本当に感謝しかありません。――では、参りましょう」

「はい!」


 こうして私たちは、連れ立って夜羽が祀られている山の中の神社を目指した。海とは反対方向にある、木々の生い茂る山々の中へと。

 自然豊かなこの山は、登山道も整備され、山菜目当ての人もよく立ち入ると聞いたことがある。しかし、用がなければ地元の人はほとんど入ることのない、深い森に包まれた山だ。

 私も幼い頃に遠足で山道を登ったくらいで、それから立ち入った記憶はない。

 月湖さんの話によると、夜羽の神社はまったく人目につかない森の奥に佇んでいるそうだ。紫月の場合と違って、山の神は山そのものが大事にされていれば、直接神社に参拝客がいなくても力が衰えることはないらしい。

 月湖さんと山の中を歩くこと数時間。本当に木々の間に隠れるように、その美しい神社は鎮座していた。

 紅色の鳥居はつやつやと輝きを放っており、黒を基調とした社は汚れひとつなく、最近建築されたかのように真新しい。廃墟のような潮月神社とは、天と地ほどの差があるように見えた。

 これが、力を持った神の神社なんだ……。思わず鳥居の前で、私は唖然としてしまう。


「……では、参りましょう」

「はい」