「はい。紫月さまの力は、あの人の憎悪によって奪われてしまった。今も紫月さまの魂は、あの人の負の感情に囚われてしまっています。だから、その根本を断つのです。そうすればきっと、紫月さまはあなたの想いを今以上に感じ、蘇えることができる……かもしれません」


 言葉の最後は、少し自信が無さそうだった。


「かもしれない……ですか」

「申し訳ないですが、断言はできません。本当に紫月さまの命は今にも消えそうですから。――あなたの想いの強さが、紫月さまを蘇らせるに十分かどうかも、私にはわかりかねます」

「それは大丈夫です」


 私は不敵に笑って言ってみせた。紫月が消える直前に気づいた、彼への深い気持ち。それはこの二年間の間に減るどころか、会えない切なさでさらに大きくなっていると実感している。

 すると月湖さんは、私に微笑み返した。


「頼もしいですね。……紫月さまに似たその笑み、とても心強いです。夜羽のところへは、私も一緒に参りましょう」

「本当ですか!?」


 正直、夜羽は私の説得じゃまったく聞く耳もたないだろうから、どうしようかなあと思っていた。彼が愛していた月湖さんも一緒なら、百人力だ。


「私も、愛した人がやさぐれているのは気分が悪いですから。まったくしょうがない人です。まあ、彼は私にベタ惚れでしたから、お力になれると思います」


 やれやれと、溜息交じりに月湖さんは言う。月湖さん、意外に強そうな女性だ……。夜羽ってああ見えて尻に敷かれるタイプなのかもしれない。


「ありがとうございます、月湖さん」