「……もしかすると、私を犠牲にしてしまったことへの後悔や、夜羽に対する懺悔の気持なんかがあって、本人が後ろ向きになっているせいもあるかもしれませんけどね。昔から、変に優しい人ですから」

「あ……」


 そう、月湖さんの言う通りだ。

 いきなり私の前に現れて、結婚するなんてわけのわからないことを言って、私の気持ちなんてお構いなしに迫ってきて、でも食いしん坊で子供っぽいかわいいところもあって、そして――。

 いつもどんな時でも、優しい人。


「だいたいの事情は分かりました。紫月は完全には消えたわけじゃない。でも姿を見せるのは難しい。――でもあなたは、私にそんなことだけを言いに来たわけではないですよね」


 きっと、どうにかする方法があるんだ。紫月を元のように、潮月神社の神様として蘇らせる方法が。月湖さんは、私にそれを伝えるために、わざわざ天国から私の元へやってきたんだ。

 月湖さんは静かに微笑んだ。


「さすが、紫月さまが妻に選んだ女性ですね。お察しがよろしいですわ」

「それで、一体どうしたらよいのでしょう……?」


 私はこの二年間、一瞬たりとも紫月のことを忘れたことはない。常にずっと彼を求めていた。潮月神社で過ごした短いけれど濃密で優しい時間を、また一緒に味わいたいと、私は願い続けていた。

 でもそれでけ強く祈っても、紫月の消えそうな命をかろうじて繋ぐことしかできていない。

 紫月の力を取り戻すためには、それだけでは足りないということだ。


「紫月さまを復活させるためには、夜羽を憎しみから解き放つ必要があると思います」

「夜羽を?」