もしかして、さっき夜羽が言っていた月湖って名前の人が、彼の恋人ってことかな? 私が津波に飲まれた園バスの中で見た女性のこと?
紫月が彼女を犠牲にして生きながらえたって……。彼女の姿を神社の中で私は見たことがないし、やっぱり彼女はもうこの世にいないということだよね?
「……何度も説明したはずだ。最初は、私が自分の命を犠牲にしてこの町を守るつもりだったのだ。しかし、神の補佐役であった月湖が、『あなたはこの町をこれからも守れなければなりません』と申して、私を差し置いて……」
興奮した様子の夜羽に向かって、紫月が静かに言った。
――そっか、そういうことだったんだ。月湖さんは、神様である紫月を守るために、自分の命と引き換えにこの町を守ってくれたってことなんだ。
紫月が力のほとんどを失い、神の補佐役の月湖さんの命まで奪ってしまった、あの大津波。本当に甚大な災害だったんだ。
「黙れ黙れっ! 我と月湖はあの時祝言間近だったのだぞ!」
髪を振り乱して、夜羽は必死に紫月の言葉を否定する。しかし紫月は彼を静かに見つめながら、こう言った。
「俺の立場からは申し訳ないとしか、言えないが……。夜羽も、本当は分かっているだろう。月湖はとても優しい女だった。自分の身など顧みずに、人間たちの幸せを願うような、慈悲深い人格を持っていただろう?」
きっと、紫月の言っている通りだと思う。
紫月だって、自分のために月湖さんが犠牲になるのは本意ではなかったはずだ。だって、彼は心優しく、広大な心を持っている。私は身をもってそれを知っているのだ。
紫月が彼女を犠牲にして生きながらえたって……。彼女の姿を神社の中で私は見たことがないし、やっぱり彼女はもうこの世にいないということだよね?
「……何度も説明したはずだ。最初は、私が自分の命を犠牲にしてこの町を守るつもりだったのだ。しかし、神の補佐役であった月湖が、『あなたはこの町をこれからも守れなければなりません』と申して、私を差し置いて……」
興奮した様子の夜羽に向かって、紫月が静かに言った。
――そっか、そういうことだったんだ。月湖さんは、神様である紫月を守るために、自分の命と引き換えにこの町を守ってくれたってことなんだ。
紫月が力のほとんどを失い、神の補佐役の月湖さんの命まで奪ってしまった、あの大津波。本当に甚大な災害だったんだ。
「黙れ黙れっ! 我と月湖はあの時祝言間近だったのだぞ!」
髪を振り乱して、夜羽は必死に紫月の言葉を否定する。しかし紫月は彼を静かに見つめながら、こう言った。
「俺の立場からは申し訳ないとしか、言えないが……。夜羽も、本当は分かっているだろう。月湖はとても優しい女だった。自分の身など顧みずに、人間たちの幸せを願うような、慈悲深い人格を持っていただろう?」
きっと、紫月の言っている通りだと思う。
紫月だって、自分のために月湖さんが犠牲になるのは本意ではなかったはずだ。だって、彼は心優しく、広大な心を持っている。私は身をもってそれを知っているのだ。