ちょうどその時、私は幼稚園から家に向かうための園バスに乗っていた。後でニュースで聞いた話だと、大津波警報が出ていたから、みんなで高台に避難するのが正解だったらしい。

　だけど実際に被害が出るような津波が来るなんて、その時は誰も思っていなかった。だから、子供はとりあえず家へ帰してしまおうというのが園の判断だったそうだ。

　しかしその津波は誰もが想像していなかったほど大きく、海から少し内陸を走っていた園バスにまで届いてしまった。津波に巻き込まれ、あっさりと水没してしまう私たち。

　私も、一緒に乗っていた友達も、先生も、みんな水中で気を失ってしまった。

　――しかし、その時だった。

　あの狐が姿を現し、私は薄っすらと意識を取り戻した。小さな狐の姿で園バスの窓から彼は入ってくると、あの金髪の美しい男性の姿に変化した。

　そして彼はその手を振り上げる。すると、信じられないことに、園バスは大きなシャボン玉のようなものに覆われて、私は普段のように呼吸ができるようになった。


「君には世話になった。こんなところで死なせるわけにはいかない。それに、ここは俺の大好きな町だ。津波などに壊させやしないさ」


　いまだにぼんやりとした意識の中で、狐さんが確かにそう言った。いつの間にか、彼の隣には黒のロングヘアを靡かせた、優しい笑みを湛えた女性が立っていた。狐さんととても雰囲気が似ている。この人も、神様の仲間なのかな？

　その後、気が付いた私がいたのは病院の上。目を覚ました私を見て、大叔父さんは泣いて喜んだ。同乗していた友達や先生は、みんな無事だったそうだ。

　そして、さらに不思議なことに。