「……あの子も、俺が死んだら頼れる身寄りがなくなっちまうんだ。あんなに幼いってのになあ……」
どういった話の流れでそんなことになったのかは分からないけれど、どうやら大叔父さんは私のことを言っているらしいことが分かった。寂しげな笑顔を浮かべて、しんみりと彼は言った。
「しかし大将。お主がまだ死期を考えるのは時期尚早ではないか?」
またひと口お酒を飲んでから、例の彼が言う。相変わらず時代劇みたいな、変な喋り方をするなあと思った。
彼の眼前には何本もの空になった酒瓶が置いてある。しかし彼はまったく酔った様子などなく、涼しい顔をしていた。
「あんた、そうは言ってもな。人間、いつどうなるかわからないだろう? あの子の両親だって……」
「――そうだったな。失礼した」
「あんたが謝ることじゃねえさ。俺はあの子の将来が心配でたまらないんだよ。俺の目の黒いうちは何不自由なく手をかけてやるつもりだが……。あの子がひとりだちして、いい人を見つけるまでに俺がどうにかなっちまったら、また寂しい思いをさせるんじゃねえかってな」
大叔父さんは、何をそんなに心配しているんだろう。確かにお父さんとお母さんが居なくなってしまった時は、悲しくてたまらなかった。でも今はもう私は元気だし、大叔父さんと毎日楽しく暮らしている。なんでそんなに、「もしも」の話に不安になっているんだろう。
現在のことしか考えられない幼い私には、不確定な未来のことを考える大叔父さんが不思議でたまらなかった。
「いい人、か。しかしあの子は、あの年でかなりの器量よしではないか。きっと美人になるぞ」