人間の姿になれば、他の人にも見えるようになるらしく、前に言っていた通り狐さんは大叔父さんのお店にちょくちょく来るようになった。
「いやー、ほんとうにいい男だねー、君は。テレビにでも出たらどうだい?」
気さくな大叔父さんは、コーヒーとチーズケーキを振舞いながらも、狐さんに向かって明るく言う。彼が来るといつも、私はなんとなく向かいの席に座った。
狐さんに私が懐いているからか、大叔父さんも彼のことを好意的に見ているようだった。
「いや。俺には絶対にやめられない別の仕事があるのだ」
「へえ、何をしてるんだい?」
「潮月神社で神職のようなものをちょっと」
本当は神様だけどね、なんてこっそり私は心の中で思う。
「へえ、あそこの神社は無人かと思っていたよ。今度俺にもお参りさせておくれ」
「うむ、是非に。しかし本当にここのチーズケーキはおいしいな」
「おう! ありがとよ!」
にこやかに話すふたり。大叔父さんの喫茶店は、夜はバーに変わる。その時間私はさすがに眠っているのだけれど、狐さんは大叔父さんと話すためによく来ていたらしい。
そんな風に、人の姿となった狐さんと不思議な関係になり始めたそんな時だった。
あの日が来たんだ。大きな地震が起こり、海沿いのこの町に大津波が襲い掛かってきた、あの日が。
「いやー、ほんとうにいい男だねー、君は。テレビにでも出たらどうだい?」
気さくな大叔父さんは、コーヒーとチーズケーキを振舞いながらも、狐さんに向かって明るく言う。彼が来るといつも、私はなんとなく向かいの席に座った。
狐さんに私が懐いているからか、大叔父さんも彼のことを好意的に見ているようだった。
「いや。俺には絶対にやめられない別の仕事があるのだ」
「へえ、何をしてるんだい?」
「潮月神社で神職のようなものをちょっと」
本当は神様だけどね、なんてこっそり私は心の中で思う。
「へえ、あそこの神社は無人かと思っていたよ。今度俺にもお参りさせておくれ」
「うむ、是非に。しかし本当にここのチーズケーキはおいしいな」
「おう! ありがとよ!」
にこやかに話すふたり。大叔父さんの喫茶店は、夜はバーに変わる。その時間私はさすがに眠っているのだけれど、狐さんは大叔父さんと話すためによく来ていたらしい。
そんな風に、人の姿となった狐さんと不思議な関係になり始めたそんな時だった。
あの日が来たんだ。大きな地震が起こり、海沿いのこの町に大津波が襲い掛かってきた、あの日が。