食欲はあったから病気ではないみたいだし、怪我もしていないように見えるけれど。すると、狐はしばしの間黙っていたけれど、私をじっと見つめてからこう言った。


『聞いて驚くなよ。実は私はここの神社の神様なのだ』

「神様? へー、すごいね」

『……すごいと言う割には、薄い反応だな』


 私の言葉が想像していたものと違っていたらしく、狐は呆れたように言った。

 神様って確かにすごい人みたいだけど……。アニメとか絵本にもよく出てくるし、そんなに珍しい人ってわけじゃないんでしょ?

 幼く物知らずな私は、そう思ってしまったのだった。


『まあ、変に騒がれるよりはそれくらい淡白なほうがやりやすくはあるな』

「……? よくわかんないんだけど、狐さんは何に困ってるの?」

『最近この神社にお参りに来る人間がめっきり減っていてな。神は、参拝客の願いを導くことによって生き長らえている。それで人が来ていないゆえ、私の力が弱まってきているのだよ』

「へえ。じゃあこの神社にお参りに来る人が増えれば、狐さんは元気になるってこと?」

『察しがいいな。その通りだ』


 狐は感心したように言った。


「じゃあ私がたくさん連れてきてあげるよ! お友達いっぱいいるから!」


 幼稚園にも友達はたくさんいるし、大叔父さんのお店に来る人とも結構仲良くしている。きっと、お願いすれば神社に来てくれるはずだ。

 しかし狐は、困ったような顔をした。


『むう……。しかし、私は縁結びの神様なのだよ』

「縁結び……って何?」