お店をやっている大叔父さんはいつも優しいし、とてもおいしいお菓子を毎日作ってくれる。私は彼が大好きだった。最近やっと、一緒にお菓子作りができるようになって、彼との暮らしはますます楽しくなってきていた。

 狐は少しだけ身を起こすと、私が袋から出して差し出したドーナツの匂いをくんくんと嗅いだ。


『いい匂いだ。しかし、君の分のおやつじゃないのかい? 俺にくれていいのか?』

「私はさっき一杯食べたもん。これは、お友達にあげようと思ってたんだ。でも狐さんの方がお腹すいてると思うから、あげるよ」

『……そうか。それならば遠慮なく』


 よろよろと立ち上がり、私の手から豆腐ドーナツを食べていく狐。本当にお腹が減っていたのか、すごい勢いで食べていく。袋の中に三つあったドーナツはあっという間に狐の胃の中に収まってしまった。


『ありがとう。とてもおいしかったよ』


 食べて幾分か元気を取り戻したらしい狐は、しっかりと立って、覇気のある声で言った。私はにっこりと笑う。


「大叔父さんと私が作った物だもん! おいしいに決まってるよ!」

『ほう……。君の大叔父殿は素晴らしいな』

「うん! お店やってるからね! いつもお客さんでいっぱいなんだよ」

『では今度、その店にも行かせていただこう』

「ほんと!?」


 喜ぶ私だったけれど、狐がお店に来ても入れないんじゃ……と、不安がよぎった。でもそう言ったら狐ががっかりするような気がしたから、黙っておくことにする。


「ところで、狐さんはなんでそんなに弱っていたの?」