やっぱり狐だった。金色の被毛は、キラキラと太陽の光に照らされて美しく輝いている。薄っすらと開いていた目から見える瞳は空色で、宝石みたいだなあと思った。

 だけど、その美しい獣はとても弱っているようだった。胸を激しく上下させて、弱弱しい呼吸をしていた。


「狐さん、大丈夫?」


 屈んで声をかける幼い私。すると、半分しか開いていなかった狐の瞼が、ぱちりと開く。



『……驚いた。人間の娘、私の姿が見えるのか?』


 狐から聞こえてきたのは、驚くことに大人の男性の弱弱しい声だった。しかし、耳から聞こえたのではなく、直接頭の中に響いてきているような、不思議な声だった。

 人間の言葉を話す獣とは初めて会ったので、私はとても驚いた。しかし私が知らないだけで、もしかしてそういう動物もいるのかなあと、幼かったゆえあまり不思議には思わなかった。

 私は首を傾げながらも、こう答える。


「えー、普通に見えるけど?」

『……そうかい』


 丸まったままだったけれど、狐はどこかおかしそうに言った。


「どうして倒れてるの? 具合悪いの? それともお腹すいた?」

『まあ、いろいろあって弱っている。腹も減っている』

「そうなの? それじゃ、これあげる!」


 私は首から下げていたポシェットの中から、ビニール袋を取り出した。中には、さっき大叔父さんと一緒に作った豆腐ドーナツが入っていた。