次は壁側の窓に手をかけてみた。はめ殺しの窓は、もちろん開閉するような取っ手などは無かった。割ってみようかと考えてみたけれど、二十センチ四方のその窓を破ったところで、脱出は不可能だ。

 ――まずい。本当に私、ここに一生閉じ込められたままなのかな?

 そんな絶望感に襲われながらも、諦めたくない私は必死にそれを打ち消しつつ、格子を揺らしたり窓周辺を観察したりして、必死に脱出の術を見つけようとする。

 しかし、座敷牢は強固で、女の私が打ち破れるような仕組みにはなっていなかった。

 ――どうしよう。紫月……。私一体、どうなっちゃうの……?

 そのうち疲れ果ててしまった私は、その場で倒れこんで眠ってしまったのだった。





 それは懐かしい夢だった。私が大叔父さんに引き取られて、しばらく経った頃……だったと思う。

 そうだ。その頃私は、家の近くの潮月神社を遊び場にしていた。通っていた幼稚園からも近く、友達と集まってかくれんぼや鬼ごっこに興じていたのだ。

 ――どうして私は、そのことを今まで忘れていたのだろう。


「陽葵ちゃーん! どこー!」


 幼稚園で仲良くしている子の、私を探す声が響く。小柄な私は、かくれんぼが結構得意だった。その日も神社の社の裏に隠れて、友達の必死そうな声を聞きながらニヤニヤと笑っていた。

 しかし、ふと辺りを見渡した時だった。


「……狐、さん?」


 狐と思わしき生き物が、地面に小さく丸まっていたのが見えた。思わず私はその生物に近寄る。