確実に、紫月に対する想いが変わってきていた。最初は、まあ悪い人ではないだろうけど、結婚とかいきなり言われてもなあ、それに神様だし……なんて考えていた。迷惑をかけ続けるわけにはいかないから、お金を貯めて早く出て行かなきゃ、とも。

 だけど、紫月と共に、おじいさんの想いを叶えて、拓斗くんのためにシフォンケーキを作って。そんなことを一緒にしているうちに、彼の優しさ、懐の深さを私は知ってしまって。

 極めつけは、私が倒れてしまった時の彼の看病の様子だったと思う。朦朧とした意識の中で、彼の温かさがずっと私を包んでくれていことを感じていた。心から身を案じてくれている、優しい声が、私に深い安心感を与えてくれて。

 ――こんなの、意識しない方がおかしいよ。

 最近、紫月の顔を直視できなくなってしまった。最初に会った時から、「うわあ、美形だな」と惚れ惚れする気持ちはあった。でも、今はそれだけじゃない。

 紫月の朗らかに微笑んだ顔を見ると、幸福感が溢れそうになる。心臓がドキドキドキドキと早い脈を打って、居ても立っても居られない気持ちになる。

 やっぱり、私紫月のことを……。

 出来上がった苺大福を運びながらも、自分の中に生まれた甘い感情にそわそわさせられてしまう私。

 ――いやいや、最近優しくされたから、少し意識しちゃってるだけじゃない? まだそうと決めつけるのは早急じゃないの?

 結婚という恋愛における最終ゴールを、紫月からはすでに求められている。だから焦って結論付けるのは、ちょっと危険な気がするのだ。