そんなことを思っていたら、紫月がくるりと私の方を見て、少しだけ眉をひそめた。


「しかし陽葵。先ほどよりも顔が赤くなっているが。やはり、熱でもあるんじゃないか?」

「……! ないない! 大丈夫!」

「本当か? どれ……」

「え!」


 紫月はそっと私の頬を両の手で包むと、自分の額を私のそれとくっつけた。人間の親子なんかでもよくある、体温をチェックするときの動作だ。さらに顔色まで確認しだした紫月は、目と鼻の先まで近づけた顔で、容赦なく私を見つめてくる。

 どんどん体内が熱くなる。本当に熱が上がってしまうかもしれない、と不安になってしまった。

 頭から煙が出そうになるほど内側が熱せられた時、ようやく紫月は体温と顔色チェックをやめて、私を解放してくれた。


「確かに熱はないみたいだが……。陽葵の顔、茹蛸のように真っ赤になっているぞ? 本当に大丈夫か?」

「だだだだだ大丈夫です本当に! ちょっとまだ作業があるから紫月はここから出ててください!」

「しかし……」

「いいから! 早く行って!」

「わ、わかった」


 紫月の無意識の攻撃から早く逃れたくて、私は彼の背中を押しながら炊事場から無理やり追い出した。そして扉を閉めて、ひとりになった空間でとても深いため息をつく。

 ――最近、紫月と関わると心臓がバクバクと波を打って落ち着かない。少し触れただけで、さっきみたいに赤面してしまうようだし……。