うん、うまく丸められた。

 苺とあんこの甘い香りが漂う中、アルミの天板に整然と並べた白く丸い物体たちを眺めて、私は満足げに頷く。

 本日の午後のおやつは、苺大福。あんこに包んだ苺を、白玉粉の生地で丸め、片栗粉をまぶすだけで簡単に作れる和菓子だ。

 拓斗くんの騒動に巻き込まれて、寝込んだ私が目覚めてから、もう一週間。ほぼ体の調子は戻ったというのに、紫月はいまだに私に安静にしろ、お菓子作りも控えるようにと言っていた。

 だけど私はこの神社の甘味係としてきちんと働きたかったし、何よりもおやつ作りをしている方が元気になるほど製菓作業が好きなので、「簡単にできるお菓子を作るから」と主張して、こうして炊事場に立っていたのだ。

 ――紫月って、本当に嫁思いだなあ。パートナーを甘やかしてだらけさせるタイプなんじゃない? ……って、まだ私は嫁ではないけれど。

 そんなことを考えていると。


「お。おやつ、出来たのか」

「し、紫月!」


 私の様子を見に来たらしい紫月が、炊事場に入ってきた。ちょうど彼のことを考えていた私は、妙に焦ってしまう。


「陽葵、どうした? 少し顔が赤いようだが。……まさか、具合が悪いのか⁉」

「ち、違うよ! 元気元気! 元気だから安心して!」


 私の様子を見て、心配そうに詰め寄ってくる紫月だったが、私は勢いよく頭を振って全否定する。

 本当に元気だし、もし体調が悪くても正直に言ったら全身全霊で心配してくる。厄介な人である。

 それにしても、私顔赤くなっていたんだ……。


「それならいいが。……今日は苺大福か。相変わらずうまそうだな」