驚くべきことに、私はそう思ってしまったんだ。キスどころか、それ以上のことも受け入れてしまいそうな勢いすらあった。

 病み上がりで心が弱っていたから? いや、そういったことで男性の温もりを求めるほど私は女性として大人ではない。

 明らかに紫月に対する自分の気持ちが変化してきている。「よく知らない紫月との結婚はしない」という私の凝り固まった考えが、彼の内面に触れていくうちに、いつの間にか柔らかくなって形が変わってしまっていた。

 ――そう、今の私の想いは。

 この人なら。この人なら、私は。

 結婚してもいいのかもしれない。

 紫月の抱擁による余韻を感じながら、私はそんな自分の甘い気持ちをひとりで噛みしめるのだった。