ま、真顔でそんなこと言わないでよ。文句が言えなくなっちゃうじゃないの。

 
「と、とにかく。もう一度作るからね! 三人とも洗い物お願い!」

「了解した」

「はいですニャ!」

「承知いたしました」


 というわけで、三人に洗い物をしてもらっている間に、お母さんのメモを見直して作り方を復習する私。

 本当に、メレンゲの作り方からオーブンの火加減まで、手のかかるレシピだ。きっと息子の喜ぶ顔が見たい一心で、お母さんはこのケーキを作っていたのだろう。彼が命を失っても、なお。

 四度目の挑戦。私は「集中したいから、静かにお願いね」と、三人衆に言付けて調理を始める。作業中ずっと、炊事場の隅で椅子に座り、無言でいる三人。

 紫月なんて神様だというのに、おとなしく従者と肩を並べているのが、なんだか微笑ましかったし彼の人柄のよさを感じた。

 そして、焼き上がったシフォンケーキを、紫月に頼んで神通力によって数時間冷やした状態にしてもらった。私たち四人は、一斉にそのケーキを試食した。

 ――すると。


「これは、確かに……。さっきのケーキよりは固いけど、適度に食感があって味が感じやすいですニャ」

「とても優しい味ですね……。子供はさぞかしおいしく食べるでしょうね」

「母親の情愛が詰まっている味だからな」


 千代丸くんと琥珀くんは、噛みしめるようにケーキを味わいながらしみじみと言い、なぜか紫月な得意げな顔をする。

 口の中いっぱいに広がっていく、甘くて愛情たっぷりの味に、私は感慨深い気持ちになった。