不遜ながら、私を愛しているらしい紫月は、私が作った物ならばなんでもあまり気にせずに食べてくれるんじゃないかと思い込んでいた。だから、シフォンケーキの味の微々たる違いに気づいていたことが、少し意外だったんだ。


「いや、味というか。柔らかさだな。むしろ、拓斗の母親のケーキは少し固かったのでは? 何故かはわからないけれど」

「固かった……。そっか! 冷めてたからだ」


 お墓で食べたのだから、あのシフォンケーキは作ってから数時間は経過した状態だった。シフォンケーキは柔らかさが命だと私は思い込んでいた上に、一刻も早く拓斗くんに食べさせてあげたくて、焦って頭がうまく回っていなかった。

 冷めた状態でこそ、このレシピはしっとり感が増して味の優しさが濃密になるんだ。

 子供は気まぐれだから遊びに夢中だったらおやつは後回しにするし、そんなに量は食べられない。だからお母さんは冷めてもおいしく食べられる、そんなレシピを作ったんだ。


「じゃあこのケーキの残りを冷まして……って、えー! もう紫月全部食べちゃったの⁉」


 お皿に置いていたはずのシフォンケーキが忽然と姿を消していたので、私は目を丸くする。


「む? すまぬ。陽葵が味が違うと言っていたから、もう一度作り直すのかと」


 罰悪そうに言う紫月。私は深く嘆息をする。


「これを冷ませばたぶんOKだったの! もう本当に紫月は食いしん坊なんだから!」

「申し訳ない。愛する陽葵の作ったものは、一片すら残したくないという思いが強いのだ」

「え……」