ご両親の愛を、ちゃんとあの子に伝えなくっちゃ。私ができるのは、この親子の懸け橋になることくらいだ。


「はい! もちろんです!」


 私が満面の笑みを浮かべてそう言うと、ふたりは「ありがとうございます」と涙ぐみながらそう言って、お墓を去っていった。

 でも、私が次にここに来るのは、拓斗くんをきちんと成仏させた後。ちゃんと天国へと、彼を見送った後だ。

 ――そのためには。


「紫月! 早く神社に帰ってシフォンケーキを作ろう! 材料への神通力だかなんだかは、お願いね!」

「うむ、承知した。他に手伝えることがあったら言ってくれ」

「ありがとう!」


 紫月は私に近くに寄れと手招きをする。神の力による瞬間移動で、神社に帰るためだ。彼は私を懐に入れようとするが、なんだか抱きしめられるような気がしたので、私は素知らぬ顔をして彼の背中にそっと手を置く。


「つれないなあ」


 困ったようにそう呟かれたけれど、私は聞こえないふりをした。

 今抱きしめられたら、確実に心臓が激しく波打ってしまう。少し前までは、ときめきよりも困惑の思いの方が強かったけれど。

 紫月が優しくて、私のことをよく理解してくれていて、縁結びの神として人間や幽霊のことすらも見捨てられない性格だっていうことを分かりつつある今は。

 彼に心が傾いてしまうような気が、ふとしてしまったのだ。

 その後瞬時に潮月神社に戻った私たちは、早速炊事場へと向かったのだった。





「うーん……」