「本当は今日君を迎えたかったのだが、準備がいろいろあってな。また明日出直すことにする」

「……? はい?」


 迎えたかったとか準備とか、さらに意味が分からない。でも、明日の大叔父さんの四十九日に来るってことなのかな。親戚の誰かが彼と繋がっていて、案内状を送ったのかもしれない。

 でも、この人お通夜やお葬式にはいなかったのに……。その時は都合が悪かったのだろうか。


「それでは、また明日だ」

「え、あ、はい」


 いろいろついていけていないけれど、もうお暇するらしいので、私は彼をお見送りすることにした。

 「また、明日」は明日の四十九日に来るってことだろう、たぶん。


「玄関へ……あ、そういえば縁側から入っていらっしゃいましたよね。靴はそっちに――。……⁉」


 不意に感じた背中と胸への圧迫感。それによって、強制的に黙らされた私。

 一瞬何が起こっているのかわからなかった。しかし、浴衣の生地の素朴な麻の匂いと、心地よい温かさによって、段々と理解していく。

 抱きしめられていた。彼に。名前も知らない、恐らく今日始めた出会った、神秘的な美形の彼に。


「必ず、迎えに来る。――明日」

「え……⁉」


 耳元で、熱っぽくそう囁かれた。まるで恋人にするそれのような気がして、彼氏いない歴年齢の、恋愛にまったく耐性のない私は、硬直してしまう。

 え、え。何これ何これ! どどどどどういうこと⁉

 私なんで、この人に抱きしめられちゃってるのっ⁉


「ではな」