(そりゃ、俺と御堂さんは組んでまだふた月ちょっとだし。相棒っていうか、部下だし)

午後の仕事中、巧は悶々と考える。

(そもそも、俺は刑事として仕事してきてるわけじゃないから、そういった面では役に立たないとは思うけれど)

先ほどの陣馬と誉のやりとりに心が妙にささくれ立つ。
あのとっつきにくくて悪辣で横暴な上司・御堂誉が信頼している元相棒……それが一課のエース陣馬遼……。同期で友人の大西も陣馬に心酔している。
素直に憧れたい。
巧の目標・一課の刑事だ。今回の殺人事件も特捜本部の捜査員に入っている。優秀な人材だ。
それなのに、なぜか素直に憧れられない。誉との無二の信頼関係にモヤモヤと心が曇る。

「階、アポ電強盗の警戒ポスターはどうなった」

誉の声に、はっと巧は顔をあげた。気づけば定時は過ぎ、井草も古嶋も帰宅した後だ。誉に指示されたポスターはまだ出来上がっていない。なお、業者にデザインと印刷を依頼するようなポスターは広報課が企画する。巧が作成しているのは、周辺住民に配る用の簡素な手作りポスターである。

「あの……すぐに」
「すぐとはいつだ」
「えええと~」
「明確な回答を用意せずごまかしたな。おまえは小学生か。恥を知れ」

ぴしゃりと言われ、曇っていた心はさらに暗くなる。