「陣馬が特捜本部にいてくれてラッキーだったよ。早速だが、概要を教えてくれ」

概要? 殺人事件まで起こってしまって、事件に関わるのは諦めたんじゃなかったのか? 巧が首をかしげる一方、陣馬遼は頷いた。
なお、突如現れた一課のエース刑事に、井草は仕事をするフリを始め、古嶋はPCディスプレイに頭を隠し気配を消している。ふたりともこれ以上関わりたくありませんオーラを出しているのがありありと感じられる。

「被害者の死亡推定時刻は昨夜十二時~二時。頸動脈を切られての失血死。右背面に腎臓に達する傷。生活反応が出ているから、背中の創傷が先についた傷だ。御堂の推察通り」

陣馬の説明に、巧は誉の顔を伺い見る。どうやら、陣馬に捜査情報を流すよう要請していたようだ。おそらく、こちらが調べた内容もすでに陣馬に渡っている。
誉が事件に対してどうするつもりなのかはわからないが、少なくとも陣馬に託す部分は大きいようだ。
巧は複雑な気分になった。一課に任せて身を引くべきとは思っていたが、こんなとき誉が頼るのはやはり元相棒の陣馬遼なのだ。

「防犯カメラの映像は確認済みか?」

誉は当然というように、さらなる情報を求め、尋ねる。