「はい、お疲れ様ー」

偉そうな態度で周囲に声をかけてやってくる殺人捜査のエキスパートたち。その先頭の男がこちらを見た。年嵩の恰幅のいい刑事だ。人相はいいとは言えない。

「御堂~、おまえはなにやってんだァ?」

そんな気はしていたが、やはり御堂誉のことを知っているようだ。さらに相手の第一声で、彼女がどう思われているかもわかってしまった。

(期待はしてなかったけど、やっぱり同僚に嫌われてる!)

「おい、挨拶は? 本当に上を上とも思わねえのは変わってねえなァ、御堂!」

ネチネチした声に巧の方が嫌な気持ちになった。あからさまな嫌悪と圧力を感じさせる態度だ。
誉は会釈程度に頭を下げ、平然としている。

「ご無沙汰しています。村中(むらなか)警部」
「おまえは刑事課じゃねぇんだろう? 確か犯抑だった。なんでこんなところにいんだァ? 一課風吹かせにやってきちゃったのか? ああ?」

この村中という警部の方が裏社会の人間ではというほどガラの悪い口調だ。誉を見つめる表情はどんどん憎々しげに歪んでいく。
当の誉は特に何も返さず、唇を閉ざしている。つんとした無表情から、言い込められているのではないとわかる。おそらく、この村中という男と話すことが一切ないのだ。話しても無駄という小馬鹿にした空気が横にいて伝わってくる。
巧にわかるのだから、本人にも誉の態度は伝わるようで、村中警部は苛々と彼女を睨んでいる。なにか言いたげに口をもぞつかせたが、結局舌打ちをして前を通り過ぎた。おそらくは、口で彼女に勝ったことはないのだろう。ともかく目の前で殺人事件が起こっており、一課の仕事はそれだ。